どこまで無料?Googleのクラウドサービスの「無料版」について
世界規模のサービスである「Google」では、さまざまなクラウドサービスが無料で利用できます。中小企業やベンチャー企業など、かけられる費用に限度がある企業だと、重宝します。
ただし、制限やリスクなどもありますので、特に企業で導入する場合は注意が必要です。無計画に導入して結局無料版に収まらず、予定外のコストがかかってしまったということにならないように気をつけたいところ。
提供しているサービス自体は優秀なものが多いので、賢く活用するためにぜひこの記事を参考にしてください。
Googleのクラウドサービスは2種類に分かれる
クラウドサービスとは、クラウドコンピューティングの形態で提供されるサービスです。利用者は、コンピュータや携帯端末など最低限の環境を整えることでサービスを利用できます。
『Google』のクラウドサービスの場合は、「Google Cloud」などのビジネス向けサービスと、「Google Drive」などの一般向けサービスに大きく分けられます。
Google Cloud
「Google Cloud」とは、『Google』が提供するビジネス向けのクラウドサービスです。「Google Cloud」は2008年にサービスが開始され、ソフトバンクや日本郵便、セブン-イレブン、ANAなどの大手企業でも利用されています。
『Google』が展開しているさまざまなサービスを「Google Cloud」で利用でき、AIを活用したシステムにより業務効率化を実現できるでしょう。自社で開発ができない企業にとって、Googleの機能を従量課金制で利用できることは大きなメリットといえます。
「Google Drive」など一般向けのサービス
「Google Drive」とは、『Google』が提供する無料のオンラインストレージで、「Google Drive」と呼ばれるクラウド上にデータを保存できます。パソコンやスマホ、タブレットなどの複数デバイスからアクセスが容易にできる点が特徴です。
「Google Cloud」で提供されるサービス
「Google Cloud」ではさまざまなサービスが提供されていますが、ここでは代表的な以下の6つのサービスについてご紹介します。
- Cloud Storage
- Cloud Bigtable
- Google BigQuery
- Cloud Dataflow
- TensorFlow
- Cloud AutoML
Cloud Storage
「Cloud Storage(クラウドストレージ)」とは、分析用データや文書・画像・動画などをオンライン上で保存・共有できるサービスです。
ネットワーク接続されたサーバーのストレージにデータを保管するため、遠隔地や外出先からでもアクセスできます。保存容量を自由に変更でき、自動でバックアップされる点も特徴です。
Cloud Bigtable
「Cloud Bigtable(クラウドビッグテーブル)」とは、大規模なサーバー上の大容量データを圧縮するデータストレージシステムです。データベースとストレージの機能を併せ持つサービスで、ビッグデータを分析する際のツールと連携でき、大容量のデータ転送速度が早い特徴があります。
Google BigQuery
「Google BigQuery(グーグルビッグクエリ)」とは、ビッグデータの分析を行うツールです。
ビッグデータ分析によって、消費行動や需要の変化などをデータを用いて予測することができ、企業の経営戦略に役立てられるでしょう。サーバーレスの運用であるため、データベースの専門知識がなくても活用できるといった特徴があります。
Cloud Dataflow
「Cloud Dataflow」とは、企業内のあらゆるシステムからデータを抽出して共有するツールです。
企業に存在するあらゆる基幹システムから必要な情報を取り出すことができ、生産性の向上や業務効率化に展開できます。面倒な環境構築が不要で、利用するハードルが低いことが魅力のひとつです。
TensorFlow
「TensorFlow」とは、機械学習用のフレームワークで、データやサンプルを与えることでAIが適切に処理を行います。機械学習の手法であるニューラルネットワークの一種で、ディープラーニングでの利用が可能です。
ビッグデータも扱うことができ、AndroidやiOSなどさまざまなOSに対応。導入費用などのコストを抑えつつ、最新の環境で作業できます。
Cloud AutoML
「Cloud AutoML」とは、多くのモデルをパラメーターやネットワークを変えて高精度モデルを自動で作るサービスです。機械学習のモデルを、自動で構築できます。
Cloud AutoMLではAIによる画像認識の機械学習が行えるため、製品の写真をAIに認識させることで製品ごとにAIが検知する仕組みを整えられるでしょう。
Googleのクラウドサービスが無料で使える範囲
「Google Cloud」で提供されている代表的なサービスについて解説しましたが、Googleのサービスには無料で使える範囲があります。
予算が割けない中小企業や個人事業主にとって、無料でサービスを利用できるメリットは大きいはず。「Google Cloud」と「Google Drive」の無料範囲について、ご紹介します。
「Google Cloud」の無料範囲
「Google Cloud」の無料プログラムは、以下の表のとおりです。
なお、90日間 $300の無料トライアルで、「Google Cloud」と「Google Maps Platform」のサービスを利用できます。
サービス名
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無料で使える範囲
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App Engine
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・28時間分の「F」インスタンス(1日あたり)
・9時間分の「B」インスタンス(1日あたり)
・下り(外向き)1GB(1日あたり)
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Artifact Registry
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・0.5GBのストレージ(1か月あたり)
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AutoML Natural Language
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・5,000ユニットの予測(1か月あたり)
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AutoML Tables
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・6ノード時間のトレーニングと予測
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AutoML Translation
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・50万文字の翻訳(1か月あたり)
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AutoML Video Intelligence
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・40ノード時間のトレーニング
・5ノード時間の予測
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AutoML Vision
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・40ノード時間のトレーニングとオンライン予測
・1ノード時間のバッチ分類予測
・15ノード時間のエッジ トレーニング
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BigQuery
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・1TBのクエリ(1か月あたり)
・10GBのストレージ(1か月あたり)
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Cloud Build
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・120ビルド分数(1日あたり)
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Google Cloud Deploy
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・最初の有効なデリバリー パイプライン(請求先アカウントごと)
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Cloud Functions
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・200万回の呼び出し(1か月あたり)
・400,000GB秒、200,000GHz秒のコンピューティング時間
・5GBの下り(外向き)ネットワーク(1か月あたり)
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Cloud LoggingとCloud Monitoring
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・無料のロギングの割り当て(1か月ごと)
・無料の指標の割り当て(1か月ごと)
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Cloud Natural Language API
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・5,000ユニット(1か月あたり)
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Cloud Run
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・200万リクエスト(1か月あたり)
・360,000GB秒のメモリ、180,000vCPU秒のコンピューティング時間
・1GBの北米からの下り(外向き)ネットワーク(1か月あたり)
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Cloud Shell
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・5GBの永続ディスク ストレージを含め、Cloud Shellに無料でアクセス
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Cloud Source Repositories
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・5ユーザーまで
・50GBのストレージ
・50GB(下り)
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Cloud Storage
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・5GB月のRegional Storage
・5,000回のクラスAオペレーション(1か月あたり)
・50,000回のクラスBオペレーション(1か月あたり)
・1GBの北米から全リージョン宛ての下りネットワーク(1か月あたり)
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Cloud Vision
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・1,000ユニット(1か月あたり)
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Compute Engine
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・1つの非プリエンプティブルe2-micro VMインスタンス(1か月あたり)
・1GBの北米から全リージョン宛ての下りネットワーク(1か月あたり)
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Firestore
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・プロジェクトあたり1GB のストレージ |
Google Kubernetes Engine
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・請求先アカウントごとに1つのAutopilotまたはゾーンクラスタのクラスタ管理料金が無料
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Pub/Sub
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・10GBのメッセージ(1か月あたり)
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reCAPTCHA Enterprise
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・assessments.createまたはsiteverifyの呼び出し(1か月あたり1,000,000件)
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Secret Manager
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・6つのアクティブ シークレット バージョン(1か月あたり)
・10,000 件のアクセス オペレーション(1か月あたり)
・3つのSecret ローテーションの通知(1か月あたり)
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Speech-to-Text
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・60分(1か月あたり)
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Video Intelligence API
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・1,000ユニット(1か月あたり)
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ワークフロー
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・5,000の内部ステップ(1か月あたり) |
(出典:Google)
「Google Drive」などの無料範囲
「Google Drive」などの無料範囲として、Googleアカウントを作成すると1アカウントにつき15GBの容量が付与されるようになりました。Gmailだけでなく、「Google Drive」への保存容量として利用可能です。写真や動画のアップロード・バックアップの容量としても利用できます。
サービスをより幅広く使いたいなら、有料版がおすすめです。個人向けサービス「Google One」では3つのプランが用意されており、プランごとに利用できる容量が異なります。
法人向けのサービスには「Google Workspace」があり、プランは4種類。個人向けよりも料金は高いですが、容量が多くなるうえにセキュリティ設定などの機能も含まれます。容量や機能に応じて料金が変わるので、無料版だけでなく有料版についても確認してみると良いでしょう。
無料分である15GB制限を超えないための対策
「Google Cloud」と「Google Drive」の無料範囲について紹介してきましたが、「Google Drive」では無料範囲である15GBを超えないよう利用することがおすすめです。
そこで、15GBを超えないための対策をご紹介します。できる限り無料の範囲で利用したい方は、ぜひ参考にしてください。
「Gmail」で不要メールを削除
「Gmail」は必ずしも容量を大きく使うわけではありませんが、古いメールが大量に溜まっていると容量を消費する原因になります。複数アカウントや長期間使用しているGmailアカウントでは、不要なメールは削除しましょう。
「Google Drive」で不要なファイルを削除
画像や動画などが格納されているファイルは容量が大きくなりやすいため、定期的に整理しましょう。「Google Drive」WEB版のメイン画面左側にある「保存容量 」のリンクから、容量が大きいファイルを確認できます。
【個人向け】「Google Drive」有料プラン(Google One)
ここからは「Google Drive」の有料プランについてご紹介します。有料プランには個人向けと法人向けがあり、ここでは個人向けのプラン「Google One」について解説しますので、参考にしてください。
ベーシック
「Google One」のベーシックプランは、100GBの保存容量があり月額250円で利用可能。その他『Google』からの特別サポートを受けられたり、最大5人のユーザーと共有できます。使用する容量が比較的少なく、少額で利用したい個人の方におすすめのプランです。
スタンダード
「Google One」のスタンダードプランは、200GBの保存容量があり月額380円で利用できます。特別サポートやユーザーとの共有に関しては、ベーシックプランと同様です。100GB以上の容量が必要な個人の方におすすめのプランです。
プレミアム
「Google One」のプレミアムプランは、2TBの保存容量があり月額1,300円で利用できます。特別サポート・ユーザーとの共有は他2つのプランと同様です。動画や画像などの大容量ファイルを保存したい個人の方におすすめのプランといえます。
【法人向け】「Google Drive」有料プラン(Google Workspace)
続いて、「Google Drive」の法人向け有料プラン「Google Workspace」についてご紹介します。法人向けのプラン利用を検討している方は、それぞれのサービスについて料金と容量などの特徴を踏まえて検討してみてください。
Business Starter
「Google Workspace」の「Business Starter」プランは、ユーザー1人あたり30GBのストレージ容量を月額680円で利用できます。セキュリティ保護されたカスタムのビジネス用メールの使用や、100人まで参加できるビデオ会議も利用可能です。
容量が少なく済む業務で利用したい企業にとって、おすすめのプランといえます。
Business Standard
「Google Workspace」の「Business Standard」プランは、ユーザー1人あたり2TBのストレージ容量を月額1,360円で利用できます。「Business Starter」プランと異なり、ビデオ会議では150人まで参加可能です。
30GBの使用量では足りない企業におすすめです。
Business Plus
「Google Workspace」の「Business Plus」プランは、ユーザー1人あたり5TBのストレージ容量を月額2,040円で利用できます。ビジネスメールの利用だけでなく、eDiscoveryやデータ保持が可能です。ビデオ会議は500人まで参加でき、録画・出欠状況確認の機能もついています。
大人数での会議が多い企業におすすめのプランです。
Enterprise
「Google Workspace」の「Enterprise」プランは、ストレージ容量および月額料金が営業担当者とのやり取りによって決まります。データ容量が1人あたり5TB以上必要な企業は、選択肢のひとつとなるでしょう。
「Business Plus」プランの内容に加え、S/MIME暗号化やビデオ会議のノイズキャンセル・ドメイン内ライブストリーミングが利用できます。
「Google Drive」の無料版の情報共有は危険?
無料で利用できる「Google Drive」ですが、無料版の使用には情報共有についてリスクがあるという意見もあります。情報共有におけるリスクとはどのようなものなのか、具体的な内容について解説するので参考にしてください。
個人アカウントによる情報漏洩
「Google Drive」はGoogleアカウントと連携したクラウドストレージのため、PCやスマホ、タブレットからもアクセス、閲覧や共有ができます。しかし、個人アカウントからでも自由にアクセスできることで、機密情報が外部に流出するリスクが考えられるでしょう。
共有時の人為的なミス
無料の「Google Drive」では、共有リンクを取得したり特定の人物を招待したりすることで、ファイルを共有できます。
共有リンクを取得した場合、Googleアカウントを持っていない相手ともデータを共有できる一方で、リンクを知っている人なら誰でも入れるリスクが発生します。
人為的ミスで共有リンクが流出すると、外部者がファイルにアクセスできてしまうリスクがあるため注意が必要です。
アクセス権限が3種類しかない
無料の「Google Drive」にはアクセス権限が3種類しかなく、詳細な制限ができるわけではありません。
- 編集者 :ファイルの閲覧・コメント付与・編集ができる
- コメント可:ファイルの閲覧・コメント付与ができる
- 閲覧者 :ファイルの閲覧のみ
さまざまな権限方法を使ってファイルを管理したい場合でも、柔軟な権限管理を行うことは難しいでしょう。
アクセスログの機能がない
無料の「Google Drive」にはファイルにアクセスした履歴を残す機能がないため、不正に閲覧されても閲覧者を特定することができません。複数人がファイルを閲覧している場合は、閲覧中のユーザーとしてユーザー名や匿名の動物アイコンが表示されます。
履歴が残るのはファイルに編集を加えた時のみであり、コピーや閲覧時の履歴は確認できません。
「ウェブで一般公開」の機能がある
データを共有する方法として、「ウェブで一般公開」の機能があります。
誰であっても気軽にファイルへアクセスできるメリットがある一方で、機密情報のファイルが人為的ミスで「ウェブで一般公開」に変更された場合、ネット上に拡散されるリスクに変わるでしょう。
情報共有をするなら「Google Workspace」がおすすめ
無料で利用できる「Google Drive」には先述したようなリスクがあるため、情報漏洩が大きな問題に発展しやすい法人の場合は、「Google Workspace」を利用して社内の情報を共有することが好ましいでしょう。
セキュリティ設定ができる
「Google Workspace」では複数のユーザーをグループとして管理でき、管理者がそれぞれのグループに対してセキュリティ設定の強制ができます。セキュリティ設定は、無料版では利用できません。
無料の「Google Drive」の場合は、ファイルごとにアクセス権限を設定する仕組みで、共有方法の設定によっては誰でもファイルにアクセスできます。特定のチームや部署でのアクセス制限を行うためにも、「Google Workspace」を利用して万全のセキュリティ対策を行いましょう。
30GB以上の容量がある
無料の「Google Drive」では利用できる容量が15GBですが、「Google Workspace」では30GB以上を利用できます。
容量はプランにより異なり、「Business Starter」では30GB、「Business Standard」では2TB、「Business Plus」では5TB、「Enterprise」では5TB以上で、申請により増量も可能です。
無料版とリスクを理解した上で活用しよう
この記事では、『Google』のクラウドサービスについて、サービスの内容や無料範囲、有料プラン、無料利用のリスクなどについて解説しました。
世界的なサービスである『Google』のクラウドサービスを無料で利用できることは、予算に制限がある中小企業やベンチャー企業にとって、活用しないわけにはいきません。
一方で、無料版には主にセキュリティ面のリスクがあり、情報を慎重に管理することが求められる企業にとって、大きなリスクといえるでしょう。
無料だからという理由だけで利用しリスクを理解していないと、大きな損失を被ることになりかねません。ぜひこの機会に、『Google』のクラウドサービス利用について検討してみてはいかがでしょうか。
「クラウドSE」で業務の効率化を実現
「業務効率化を実現したい」「IT活用によって売上を伸ばしたい」など、業務の効率化について悩んでいる企業も多いことでしょう。
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