ヘルプデスクの業務改善を目指すのに8つのポイント|明日から使える
「そもそも人員が少ない」「ほかの部署と兼任している」など、さまざまな理由でヘルプデスクがうまく機能していない、業務改善が必要だと感じている管理職の方は多くいるでしょう。
適正な人員を配置することも改善策のひとつですが、マニュアル化の推進、ノウハウの蓄積・共有、FAQシステムの改善など、さまざまな改善策を投じることでヘルプデスクの業務改善が進んだ事例は多数あります。
また、近年ではヘルプデスクを強力にサポートするITツールなども数多く出てきており、少ない人員で効率的に運用するには、これらの活用は不可欠だと言えるでしょう。
この記事でご紹介するヘルプデスクの課題例・改善ポイント・ツールの活用例などを参考に、ヘルプデスクの業務改善を進めてみてください。
ヘルプデスクとは
ヘルプデスクとは、製品・サービスを利用した顧客からの問い合わせや、社員からの技術的な質問・トラブルなどに関する問い合わせに対応する業務です。一般的にはITシステム関連の企業や、パソコン・コピー機といったOA機器を取り扱うメーカーなどで導入されています。
業務内容は問い合わせ対応がメインですが、ときにはクレーム処理をしたり、ソフト・ハードウェアの環境設定をしたりすることも、ヘルプデスクの仕事です。
社内ヘルプデスクと社外ヘルプデスク
ヘルプデスクというのは総称であり、実際には「社内ヘルプデスク」と「社外ヘルプデスク」に分類されます。
社内ヘルプデスクは、IT全般に関する問い合わせや社内で取り扱う機材のトラブル対応など、社員を対象とする業務です。一方で社外ヘルプデスクは、製品・サービスに関する問い合わせやクレーム対応など、顧客を対象とする業務のことを言います。
カスタマーサポートとの違い
ヘルプデスクとは別に「カスタマーサポート」という言葉が存在しますが、こちらは顧客を対象とした問い合わせ対応業務であり、社外ヘルプデスクと意味はほとんど同じです。
本記事では、社内ヘルプデスクに関する内容を基本としながらも、一部カスタマーサポート(社外ヘルプデスク)に共通する内容を取り上げています。
ヘルプデスクの課題
ヘルプデスクには、社内ヘルプデスクとカスタマーサポート(社外ヘルプデスク)という2つの業務があり、それぞれの概要や仕事内容についてお伝えしました。
ここからは、ヘルプデスクにおける課題についていくつかご紹介します。
問い合わせ件数が多い
ヘルプデスクにおける一番の課題は、問い合わせ件数が多いことです。ほとんどの場合、自己解決できそうな些細な問い合わせも受けるために、業務が圧迫されています。
優先順位を設けず問い合わせを受けた順番に対応していては、業務が滞るにとどまらず、早急に解決が必要な重要案件も先延ばしにしてしまうでしょう。逼迫した状況が何日も続くと、社員のモチベーション低下につながるデメリットがあります。
対応に時間がかかる
問い合わせ件数の増加と合わせて起こりやすい課題が、対応に時間がかかることです。主にヘルプデスクの経験が浅い場合や、対応に追われている状況で発生します。
ひとつの問い合わせ対応に時間がかかると、いつまで経っても案件が消化できません。対応が滞った挙句、顧客や取引先の企業に迷惑をかけてしまう場合もあるでしょう。
企業全体のPDCAサイクルを早く回すために、対応時間の削減は早急に改善すべき課題です。
季節要因などで件数の増減がある
企業が提供している製品やサービスによっては、季節要因などで問い合わせ件数の増減に差が出ることがあります。
例えば、月初・月末の業務処理に追われるタイミングや、定期イベントが行われる繁忙期は、一時的にヘルプデスク業務が急増するでしょう。
そのときだけヘルプデスクの人員を増やすことは難しく、限られたメンバーで対応しなければならないため、繁忙期には残業が発生してしまいます。
即時対応が必要なケースで対応できない
ヘルプデスクで受ける問い合わせのなかには、即時対応が必要な案件も存在します。すぐに対応できなければ業務に支障をきたしたり、顧客からのクレームにつながりかねません。
しかし、企業によってはヘルプデスクの人員が限られており、問い合わせ件数が多い場合は臨時案件に対応しきれないこともあるでしょう。どのような事態でも円滑に対応できるよう、ヘルプデスクの体制を整える必要があります。
業務の線引きがあいまい
ヘルプデスクは問い合わせ対応がメインですが、企業によっては事務作業やパソコンのセットアップなど、さまざまな業務を任せられることも少なくありません。
業務の線引きがあいまいになればヘルプデスクの負担が増えてしまい、モチベーションやパフォーマンスの低下につながります。
企業内で部署ごとに対応する業務の線引きを明確にし、少しでもヘルプデスクの負担を減らすことが課題です。
幅広い知識を求められる
ヘルプデスクには、企業内のPC・スマホなどのハードウェアから、Excelやチャットツールなどのソフトウェアまで、あらゆるIT関連の問い合わせが多数寄せられます。
そのため、いつどのような問い合わせが来ても瞬時に対応できるよう、幅広い知識を求められることが課題のひとつです。ヘルプデスクの負担を軽減するために、情報の共有や知識不足の補完が行える環境づくりが必要でしょう。
コア業務にかける時間が削られる
ヘルプデスクの担当社員がほかの業務を兼任している場合、本来のコア業務にかける時間が削られてしまいます。注力するはずの問い合わせ対応に十分な時間を割けないと、回答内容の質が低下したり、顧客からのクレームにつながったりするでしょう。
問い合わせ対応だけでも幅広い知識が求められるため、ヘルプデスクのモチベーションを低下させないためにも、業務過多を防ぐことが課題です。
明確な成果を測定しづらい
ヘルプデスクの業務内容に線引きがされていない場合、企業内では明確な成果を測定しづらいポジションになりがちです。
幅広い知識を要するうえに、問い合わせ対応やクレーム処理、事務作業などの業務をこなさなければならないため、正当な評価を受けないとモチベーションが低下してしまいます。
なかなか評価されない環境下でヘルプデスク業務を続けるのは、やりがいを見出しづらいでしょう。
ヘルプデスクの業務改善における8つのポイント
ヘルプデスクは、問い合わせ件数が多く対応に時間がかかったり、業務内容の線引きがなく評価されにくかったりなど、数多くの課題があることをお伝えしました。
ここからは、ヘルプデスクの業務改善におけるポイントについてご紹介します。
問い合わせ件数を減らす
ヘルプデスクの課題でお伝えしたように、問い合わせの多くが自己解決できる些細な内容のもので業務を圧迫しています。
したがって、チャットボットやFAQシステムなどでよくある質問を設置し、問い合わせをする前に解決可能な体制を整備することが大切です。チャットボットやFAQシステムの利用率を高めることで、ヘルプデスクの大きな問題点であった問い合わせ件数を減らせるでしょう。
マニュアルの整備・周知の徹底
過去の問い合わせ履歴を確認して、特に多く寄せられている内容に関してはマニュアルを作成しましょう。定期的なマニュアルの整備・社員への周知を徹底すれば、自己解決できるような簡単な問い合わせ内容の件数を大幅に減らせます。
また、これまでの問い合わせ対応で蓄積されたノウハウ・ナレッジを社内に共有することで、業務の引継ぎや新人教育にも役立つでしょう。
教育体制の強化
ヘルプデスクの業務を改善するためには、ヘルプデスクへ問い合わせをする前に疑問を解決してもらう必要があります。そのためには、定期的に社内で研修会を実施したり、マニュアルを参考に勉強会を開催したりなど、教育体制の強化でヘルプデスクの負担を減らしましょう。
なお、しばらく経っても業務改善を実感できない場合は、改善しない原因や解決方法について話し合うことで、今後の成長につながります。
返信内容のテンプレート化の推進
問い合わせ頻度の高い内容は、毎回のように文面を作成することが手間です。返信内容のテンプレート化を推進することで、ひとつの問い合わせに対する対応時間を短縮できます。
テンプレート化する順番としては、過去の問い合わせ履歴から判断するとよいでしょう。ヘルプデスクの担当社員にアンケートを取り、必要なものを作成することも手です。テンプレートを用いた返信率が高まれば、ヘルプデスクの業務負担がかなり軽減します。
業務内容の明確化
企業内で「ヘルプデスクに頼めばなんでも対応してくれる」と認識されていれば、今後も業務改善は望めません。本来ヘルプデスクが力を入れるべき問い合わせ対応に集中できるよう、ヘルプデスクの業務内容を明確化することが最優先事項です。
とはいえ、なんでも対応してくれるという印象を変えるには時間がかかります。よくある質問で対応外の業務を記載したり、定期的に周知を図ったりすると効果的でしょう。
進捗状況を可視化
ヘルプデスクの問い合わせ対応は担当者ひとりだけが行うのではなく、担当者が不在でも対応できる体制を整えることが大切です。
例えば、Excelやスプレッドシートといった誰でも共有可能なツールに問い合わせ内容を記載することで、進捗状況を可視化できます。一度シートを作成しておけばトラブル発生時の参考に使えるほか、担当者による知識の偏りがなく適切な対応ができるようになるでしょう。
専門部署を設置
ヘルプデスクに寄せられる問い合わせ内容は幅広いため、それぞれの専門部署を設置するということもひとつの方法です。
特にIT関連はニーズが高く、今後も問い合わせ件数は増加するでしょう。担当者を別々にすることで、ひとりのヘルプデスクが抱える業務負担を分散できます。
企業内に対応可能な人材が不足している場合は、アウトソーシング化も検討する必要があるでしょう。
ツールの活用
ヘルプデスクの課題を解決するためには、ツールの活用が非常に有効です。ただし、ツールの選び方を間違えてしまうと、十分な効果は得られません。
あくまでもヘルプデスク業務改善が目的なので、企業が抱えている課題を洗い出し、課題解決にマッチした機能を持つツールを選びましょう。また、社員の誰もがアクセスしやすい操作性です。
ヘルプデスクの業務効率化ツール
ヘルプデスクには解決すべき課題点が多数あり、すべての業務改善を図るためにはツールの活用が有効であるとお伝えしました。
ここでは、ヘルプデスクの業務を効率化するツールについていくつかご紹介します。
チャットボット
チャットボットとは、「チャット(会話)」と「ボット(ロボット)」を組み合わせた言葉で、ユーザーの質問に応じて自動で回答してくれるツールです。
24時間いつでも疑問を解決できるというメリットが大きく、さまざまな企業のWEBサイトに設置されています。ヘルプデスクへ問い合わせをする前に社員の自己解決が望めるため、問い合わせ件数の大幅な削減が期待できるでしょう。
具体的なツールは、『株式会社ラクス』が提供する「チャットディーラーAI」や、『HiTTO株式会社』の「HiTTO」などが挙げられます。
ボイスボット
ボイスボットとは、AI自動応答システムを活用した自動音声応答ツールのことです。チャットボットとは違い、音声で回答内容を伝えてくれるという特徴があります。
24時間365日稼働のコールセンターを実現したいという声から、近年では金融や保険、通信サービスなどの受付に導入されているケースが多いです。ボイスボットでは回答できない一部の問い合わせのみをヘルプデスクにつなげられるため、業務対応の効率化が期待できるでしょう。
例えば、『株式会社AI Shift』が提供する「AI Messenger Voicebot」などのツールがあります。
FAQシステム
FAQシステムとは、企業の製品やサービスに関する、よくある質問とその回答の一覧を生成してくれるツールのことです。
よくある質問をまとめておけば、社員が自分で検索して疑問点を解決できます。それにより、ヘルプデスクに対する必要以上の問い合わせは減るでしょう。また、FAQシステムは新人研修でも大いに活躍するほか、社員の知識量が均一化されることも大きなメリットです。
具体的なツールは、『株式会社オウケイウェイヴ』の「PKSHA FAQ」や、『株式会社サイシード』が提供する「AI Search」などがあります。
ナレッジ共有システム
同じ質問を何度も繰り返せば、それだけヘルプデスクの業務を圧迫してしまいます。ナレッジ共有システムの導入で問い合わせ内容・回答をまとめることにより、ヘルプデスクへの同じ質問を減らせるでしょう。
また、蓄積されたナレッジは社員に共有されるので、問い合わせの対応時間を短縮できたり、属人化を防げたりするメリットもあります。
ナレッジ共有ツールとしては、『株式会社ビットジャーニー』の「Kibela」や、『株式会社プロジェクト・モード』の「NotePM」などが有名です。
問い合わせ管理ツール
問い合わせ管理ツールとは、顧客やユーザーから寄せられた問い合わせを一元管理できるツールです。適切な担当者へ問い合わせを自動で割り振る機能や、回答内容のテンプレート機能など便利な機能が充実しており、ヘルプデスクの業務全般を効率化できます。
さらに、毎月の問い合わせ件数や問い合わせが集中する時期、1件あたりの対応時間といった、さまざまなデータ分析が可能です。
具体的には、『株式会社Zendesk』が提供する「Zendesk」や、『株式会社ラクス』の「メールディーラー」などが挙げられます。
グループウェア
ヘルプデスクの業務を改善するなら、社内の情報共有やコミュニケーションを効率化するグループウェアのIT化もひとつの方法です。
チャットツールやタスク管理、社内wikiなど便利なアプリケーションが備わっており、ヘルプデスクの抱える課題を解決できます。また、グループウェアはテレワークに対応しているうえ、複雑な手順がなく誰でも操作しやすいというメリットも大きいでしょう。
具体的なツールは、『株式会社ネオジャパン』が提供する「desknet’s NEO」などがあります。
ヘルプデスク改善の注意点
ヘルプデスクの業務改善ポイントや効率化ツールについて詳しくお伝えしましたが、実行する前に注意点の把握が必要です。
ここでは、ヘルプデスクを改善する際の注意点についてご紹介します。
属人化を避ける
ヘルプデスクは数多くの問い合わせ対応をこなすため、担当者一人ひとりにナレッジやノウハウが蓄積されます。個人がスキルアップすることに問題はありませんが、特定の担当者に知識やスキルが偏ってしまうような属人化は避けなければなりません。
ナレッジやノウハウは定期的に社内へ共有し、必要な業務マニュアルを整備することが大切です。
担当者の負担増に注意
ヘルプデスクが受け持つ問い合わせ件数は多いですが、その割に少人数の体制で対応しているケースがほとんどです。そうなると、対応業務の線引きがあいまいな場合は業務過多の状態になり、モチベーションの低下につながります。
業務内容を明確化したり、問い合わせ件数を減らすツールを導入したりして、担当者の負担を増やさないようにしましょう。
人数不足・兼任ならアウトソーシング活用もあり
ヘルプデスク業務を兼任している企業では、人数不足により適切な人材を割り当てられず、業務改善の着手が難しいこともあるでしょう。「業務負担を減らしてコア業務に集中したい」という場合は、ヘルプデスク業務をアウトソーシングすることもひとつの方法です。
アウトソーシングは外部に委託するため情報漏えいリスクは高まりますが、その分、兼任していた担当者は本来の業務に注力できるため、企業全体の収益性アップにつながります。
契約形態は、「固定型料金方式」と「従量型課金方式」の2種類。サービスや問い合わせ件数の多さによって料金が異なるので、十分に検討したうえで決めるとよいでしょう。
ヘルプデスクを改善してナレッジを共有
ヘルプデスクの業務改善を目指すなら、まずは解決すべき課題を明確にしましょう。課題に合わせて問い合わせ件数を減らしたり、業務の線引きを明確化したりすることで、ヘルプデスクの業務負担が軽減されます。
また、業務の属人化が発生しないように、個人が持つナレッジやノウハウは適宜社内に共有することも大切です。
企業によっては業務効率化ツールやアウトソーシングを導入することで、ヘルプデスクの業務改善が実現するでしょう。
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