ペーパーレス化のメリット・デメリットとは?事例を含めて紹介
働き方改革の一環としてよく耳にするペーパーレス化ですが、そのメリットやデメリットについてはなんとなく理解している程度かと思います。良い面だけが捉えられがちな部分もあり、問題点や弊害についてはあまり知られていないのも事実です。
そこでこの記事では、ペーパーレス化の良い面と悪い面の両面をお伝えしていきます。具体的な事例や活用できるツールなども紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。ペーパーレス化を取り入れるかどうかの判断に役立つでしょう。
ペーパーレス化とは?
「ペーパーレス化」とは、会議資料や請求書、報告書などさまざまな紙の資料や文書を電子化して保存・活用し、企業全体の生産性向上を図ることを指します。
電子化には、情報の検索性を高めるなどの業務効率を向上させる効果がありますが、ペーパーレス化の対象は広く、検討が進みにくいのが現状です。
ここでは、ペーパーレス化の重要性となぜペーパーレス化が進みにくいのか、よくある問題や課題とその解決方法をみていきましょう。
ペーパーレス化の重要性
テレワークの普及により、紙を前提とした働き方が難しく、業務そのものの見直しが必要になっています。
社員の業務効率を高めるためには、一人ひとりの持つ情報を素早く共有することが、いままで以上に重要となり「ペーパーレス化」が求められるようになりました。
また、企業だけではなく、政府もペーパーレス化を推進しており、2022年1月から改正電子帳簿保存法が施行されています。
改正電子帳簿保存法により、電子データで受け取った帳簿などの書類は、電子データのまま保存しなければなりません。猶予期間は2023年12月末までのため、ペーパーレス化への早急な対応が必要なのです。
(参考:電子帳簿保存法が改正されました|国税庁)
ペーパーレス化の問題・課題
ペーパーレス化が進まない問題や課題として、紙書類の提出が企業ルールになっていることや、オペレーション変更によりストレスが発生することが懸念されるなどが挙げられます。
企業ルールやオペレーションの変更は、ペーパーレス化の目的やメリットを明確にして、経営層を含めて取り組むことで解決に近づくでしょう。
また、ペーパーレス化のノウハウが社内で蓄積されていない状態で、一気に進めるのは難しいため、業務への影響が少ない書類などから段階的に始めてください。
ペーパーレス化のメリット
ペーパーレス化のメリットとしてイメージしやすいのは、紙やインクのコストを削減できることや書類を探す手間が省けることではないでしょうか。
実は、ほかにもペーパーレス化のメリットは多く、働き方改革や企業イメージの向上につながることもあります。
ここでは、ペーパーレス化のメリットを紹介するので、ぜひ確認してみてください。
書類を探す手間が省ける
ペーパーレス化することで、書類や文書の所在が明確になり、さまざまな端末からいつでもどこからでも、簡単に検索・確認できるようになります。
紙で文書を保管していると、保管場所への移動や、必要な文書を探すことに時間が必要です。
電子文書であれば、キーワード検索や全文検索ができるようになり、見たい書類や内容を探す手間や時間を大幅に減らせます。
紙やインクのコストを削減できる
紙やインクのコスト削減も、企業がペーパーレス化に取り組むメリットです。
ほかにも紙の印刷にかかる費用として、印刷機器のリース代やメンテナンス代、文書の郵送代、倉庫などの保管場所代、文書の廃棄費用などがあります。
業務に必要な文書を紙で運用・管理している場合、実は多くのコストが発生しているのです。
修正や共有が容易になる
文書を電子化すると、情報の修正や共有をスピーディーに行うことができるようになります。
紙の書類や文書の場合、修正や共有のたびに印刷が必要です。また、複数人で修正を行う場合には、別々に上がってくる修正内容をまとめて、文書に反映させなければなりません。
文書を電子化することで、複数人が同時にひとつのデータにアクセスでき、オンラインでのデータ共有や編集などが容易に行えます。
紛失リスクや情報漏洩が減る
紙面では、鍵付きの棚で保管するなど物理的なセキュリティ対策しかできないため、紛失リスクや情報漏洩リスクが高いです。
ペーパーレス化することで、アクセス権限や閲覧権限の設定を活用できます。さらに、ログ管理によって、いつ誰が閲覧・編集したのかがすべて記録として残り、追跡することも可能です。
ペーパーレス化は、紛失リスクや情報漏洩リスクを減らし、セキュリティの強化にもつながります。
書類管理スペースを削減できる
ペーパーレス化により、書類を保管していた場所を削減することも可能です。いままで書類を置く棚が並んでいたスペースを、別の用途に活用することができます。
企業において家賃は大きなコストであるため、オフィスそのものを縮小することができれば、紙やインク代以上にコスト削減が実現できる可能性もあるでしょう。
働き方改革や企業イメージ向上につながる
ペーパーレス化で紙の使用を抑えることは、「環境や資源に配慮している企業」「SDGsに積極的に取り組む企業」として認知され、企業のイメージ向上にもつながります。
また、従業員に働き方改革を推進する企業であることを見せられるため、仕事へのモチベーションもアップするでしょう。
ペーパーレス化のデメリット
ここまでは、ペーパーレス化のメリットを紹介してきました。反対に、ペーパーレス化のデメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
電子化できない書類があることや社員の負担が発生すること、ネットワーク障害の影響を受けることなど、ペーパーレス化のデメリットとなり得る点を解説していきます。
電子化できない書類もある
ペーパーレス化といっても、すべての書類が電子化できるわけではありません。
例えば、「事業用定期借地権設定のための契約書」などは、公正証書として必要な契約書であるため、ペーパーレス化が禁止されています。
また電子化自体は可能なものの、相手の同意が必要となる「工事請負契約書」などもあり、業種によってはペーパーレス化に限界があるのが現状です。
ITに不慣れな社員の負担になる
ペーパーレス化により、紙ベースで行なっていたやりとりはPCやタブレット、スマートフォンが中心になります。
ITに不慣れな社員には負担になることが考えられ、最初のうちはかえって業務効率が落ちてしまうこともあるでしょう。
また、取引先にも電子文書のやりとりに対応してもらう必要があり、取引先の環境や状況によっては不便をかけてしまう可能性も否定できません。
ネットワーク障害などの影響を受ける
オンラインでの情報のやりとりは、ネットワーク障害などの影響を受けます。
社内のネットワークやシステム、機器などに障害が発生すると、一時的に使用できなくなる恐れがあり、業務に支障をきたすことになるでしょう。
ペーパーレス化を進めることによって、社内ネットワークの負荷が大きくなることを理解し、あらかじめ安定したネットワーク環境を構築しなければなりません。
ペーパーレス化を推進する方法
ペーパーレス化を推進するためにできることは、多数あります。
ペーパーレス化できる業務を知り、取り組めるものからひとつずつ実践しましょう。ここでは、ペーパーレス化を推進する方法を紹介するので、ぜひ確認してみてください。
電子文書で保存する
まずは、紙の書類をPDFなどを使用して電子化し、電子ファイルに保存していくことから始めると良いでしょう。
書類を紙に印刷しファイリングする必要がなくなるため、まさにペーパーレス化として役立ちます。
また、会議やセミナーで使う資料の印刷をなるべく控えて、モニターに映すことなどもペーパーレス化のひとつです。
電子契約対応のシステムを利用する
契約書作成の際にも、電子契約対応のシステムを導入することで、ペーパーレス化を推進できます。
電子契約では印鑑は不要なので、わざわざ出社する必要がありません。印紙代も節約でき、書類をやりとりする時間や手間がかからないことも大きなメリットです。
ペーパーレス化を進めるために、システム自体をペーパーレス化に対応したものに置き換えていくことも検討するといいでしょう。
事務作業をデジタル化する
経理業務や給与計算業務などの事務作業のなかには、デジタル化ができる作業があります。
例えば、給与計算をデジタル化すれば、給与計算の時間が大幅に短縮できるだけでなく、給与明細そのものを電子化することにつながるでしょう。
このように、事務作業自体をデジタル化することで、それに付随する書類も自ずと電子化されやすいです。
ペーパーレス化の事例
ここでは、ペーパーレス化の事例を3つ紹介します。
いずれもコスト削減や業務効率化につながっているので、活用できる部分をぜひ参考にして実践してみてください。
会議資料の電子化
長野県長野市では、会議資料の膨大な使用量に着目し、ICTを積極的に活用して会議のペーパーレス化を試みました。その結果、目標であった12万枚を超えて、約14万枚もの紙の使用を抑え、印刷費用として約300万円分の削減に成功しています。
長野県長野市では、以前から一部業務やシステムをデジタル化していましたが、紙の使用量の削減にはつながっていませんでした。
業務で使われている書類のなかには、電子化できないものがあるものの、日常的に行われる会議の書類に注目し、運用ルールや社員の意識改革を行いながらペーパーレス化を行ったのです。
(参考:(巻末)「10のワークプレイス改革の取組」(詳細版))
請求書の電子化
100円ショップ「DAISO/ダイソー」を運営する株式会社大創産業は、請求書の電子化を実践しています。
事業拡大には、管理会計の高度化が必須。月次決算の早期化を目指すためには、請求書業務のデジタル化が有効であると考えたのです。
API連携で会計システムにデータを自動で取り込めるようになったことで、月次決算の締めまでの日数は半分に短縮できました。また、場所を問わず請求書の承認が可能になったことで、テレワークができるようになった点も大きな変化といえるでしょう。
報告書の電子化
介護の現場でも書類の電子化が進んでいます。株式会社アットティーでは、報告書を電子化しました。
介護業界では日報や報告書を紙ベースで共有することがまだまだ一般的です。紙ベースでの情報共有はリアルタイムに行うことができないため、情報が遅れて共有されていました。
電子化でスピーディーな情報共有が可能となり、最新の情報を知らないまま現場対応してしまうといった問題の発生を防ぎ、仕事の質を高めることができたのです。
(参考:介護の導入事例|Stock)
ペーパーレス化に役立つツールの例
ペーパーレス化に活用できるツールは、無料のものから有料のものまで多種多様にあります。
ここでは、ビジネスシーンでよく利用されているツールを紹介します。サービス例も記載しているので、ぜひ参考にしてみてください。
チャットツール
チャットツールは、ビジネス上のやりとりをオンラインで行えるサービスです。
コミュニケーションを行うメンバーごとにグループを作成し、その中でチャットや通話などのやりとりを行うことができます。電話やメールより気軽にやりとりができるため、情報共有がスピーディーになるでしょう。
サービス例は以下の通りです。
電子契約システム
電子契約システムを利用すると、オンラインで印鑑を押すことができます。また、システムによっては保管を行えたり、メールやリンクで共有することが可能です。
紙の契約書は、収入印紙が必要だったり、契約締結までに手間や時間がかかったりしますが、電子契約システムはそれらの問題を解決できます。
申請や承認といったワークフローを効率化することで、内部統制の強化にもつながるでしょう。
サービス例は以下の通りです。
オンラインストレージ
インターネット上にデータを保管するサービスのことを、オンラインストレージといいます。
自社でサーバーを整備する場合と異なり、インターネットさえつながれば、場所を問わずデータへのアクセスが可能です。
クラウド上にデータを保存することで、容量不足やハードディスクの破損、災害などからデータを守ることができます。
サービス例は以下の通りです。
ペーパーレス化で業務効率を高める
ペーパーレス化は、コスト削減、時間短縮といった業務改善の効果に加え、業務効率の向上につながります。
コストや時間などのリソースに余裕が生まれると、社員の本来の業務への労働意欲が高まるでしょう。また、情報共有が円滑になることで、意思決定や決断が早くなり、業務の効率化が進みます。
停滞していた業務は動き出し、仕事の質が向上することで新規取引や受注が増えるため、利益の増加が見込めるでしょう。
この機会に、ペーパーレス化に積極的に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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