生産性の向上や業務の効率化を目指し、新たなシステムを導入しようと考えている企業は多いことでしょう。
しかしながら、システムさえ導入すれば課題解決が図れるというのは早計で、「目的の明確化」「業務フローの洗い出し」「目的にあったシステムを見つける」など、様々な点に思慮を巡らせて効率化を図っていかなくてはなりません。
この記事では、システム導入の流れだけでなく導入に至るまでに検討すべきことに関しても紹介しますので、システム導入を検討している企業はぜひ参考にしてください。
具体的なシステム導入の流れ
まずは、具体的なシステム導入の流れを紹介します。
システムを導入して業務を効率化したいけど、なにから手をつければ良いのかわからない方は、ぜひ確認してみてください。
ただし、企業や状況によって異なる場合があるので、導入フローの各段階で課題に柔軟に対応しながら進めましょう。
目的定義
「目的定義」では具体的にシステムの機能や仕様を決めるため、システムを導入する目的を定義します。
目的を明確にすることで、必要のない機能を盛り込んでしまうことや、反対に求めていた機能を満たしていないシステムを導入してしまうというような失敗を防ぐことが可能です。
課題の整理
次に、業務の課題を洗い出します。実際に業務に携わっている現場担当者にしっかりヒアリングすることがポイントです。
外からでは問題点が見えにくいこともあるため、ヒアリングを通して業務における課題を明確にしましょう。
すべての課題をシステムで解決できるわけではないので、あがった課題のなかから、解決できるものを見極める必要があります。
ベンダーの調査と決定
ベンダーの良し悪しはシステム導入の結果に大きく影響するため、ベンダー選びは慎重に行いましょう。
要望を考慮してもらうことは前提にありますが、発注側にはない新たな視点で提案や指摘を行ってくれるベンダーが望ましいです。
一緒になって、システム導入のプロジェクトを進行できるベンダーを選んでください。
ベンダーによるヒアリング
ベンダーにより、現状の業務課題やシステム導入に際しての要望事項のヒアリングが行われます。
ベンダーはシステムのプロですが、発注側の業務内容や課題をすべて把握しているわけではないので、整理した課題を正確に伝えてください。
現場担当者を打ち合わせに同席させることで、ヒアリングをさらに有意義なものにできるでしょう。
提案・見積もり
ベンダーはヒアリングの内容をもとに課題や要望事項を整理し、現状の課題を解決するための案を提示してくれます。
そして、提案内容に合意した段階で見積書が作成されます。あがってきた見積書と予算を照らし合わせながら、予算に沿うかどうかを確認してみてください。
必要に応じて、ソフトウエアのデモンストレーションを実施してもらうことで、具体性が高まるでしょう。
要件定義
「要件定義」とは、具体的にシステムの要件を決めることです。「課題の整理」で洗い出した課題を、導入するシステムで解決できる内容になっているかをチェックしながら進めていきます。
ここで決めた内容をもとにシステム開発から導入まで進められていくので、きちんと課題解決につながっているか確認しておきましょう。
詳細設計
「詳細設計」では、要件定義をもとにシステムの具体的な設計を行います。データモデル、画面設計、アーキテクチャなどを詳細に定義し、システムの構造や機能の仕様を明確化。
詳細設計の目的は、開発者がシステムを構築するための設計図を提供することです。要件や制約を考慮しながら、効率的で拡張可能な設計を行うと良いでしょう。
開発作業
次は、詳細設計をもとにした実際のシステム開発です。プログラミングやコーディング、モジュールの統合などの作業を、適切な開発手法やツールを活用し、スケジュールや予算を考慮しながら効率的に進めます。
基本的にはベンダー側での作業は状況が見えないため、こまめに連絡を取り、進捗を確認するようにしましょう。
テスト
ここでは、開発されたシステムをテストします。テストの目的は、システムの品質や正確性を確認し、バグやエラーを特定して修正することです。
テストは単体テスト・連結テスト・システムテスト・受け入れテストなど複数の工程に分けて実施され、不具合があればその都度修正が行われます。これにより、品質が確保されるのです。
データ移行作業
「データ移行作業」は、既存のデータを新しいシステムに移行するための作業です。データのエクスポート・変換・クレンジング・インポートなどの手順を実行し、データの正確性と一貫性を確保。
データ移行作業では、データの品質チェックや移行のトラブルシューティングにも注意を払います。正確なデータ移行によって、目的に沿ったシステム運用を行うことが可能です。
納品
開発とデータの移行作業が完了し、システムの準備ができたらベンダーから納品されます。
納品の際には、システムのインストールから設定、デプロイメントなど、システムが利用できる状態になるまでの手順を実施して確認しましょう。
納品後には、引き渡し書類やマニュアルを受け取ることも忘れないでください。
利用者の教育
利用者の教育は、システムの操作方法や機能の活用法を伝えることで、ユーザーがシステムを効果的に使用できるようにするための重要なプロセスです。
トレーニングセッションやハンドブックを提供して、利用者がシステムを有効に活用できるようサポートしましょう。
本稼働
システムが利用可能な状態になり、利用者の教育まで終えたら実際に運用開始です。
本稼働が始まったらシステムの動作やパフォーマンスを監視し、ユーザーからフィードバックや問い合わせがあれば対応します。本稼働の初期には、トラブルシューティングや運用上の調整が必要な場合もあるため、注意が必要です。
本稼働によって、システムの価値が実際の業務に反映されます。
導入後の効果検証
システムの導入後には、運用効果やビジネス上の利益の検証が必須です。
KPIや定量的・定性的な評価指標を用いて、システム導入の成果を評価すると良いでしょう。
利用者のフィードバックや業務プロセスの改善度合いを考慮し、システムが予定通りの効果をもたらしているかどうかを確認してください。
運用保守
システムの運用保守は、システムを稼働している限り継続する重要な業務です。
「運用」では、システムの安定性やパフォーマンスを維持し、問題や障害の発生時には迅速に対応します。「保守」では、バージョンアップやセキュリティパッチの適用、定期的なバックアップなどの作業を行い、システムの持続的な稼働を目指しましょう。
ユーザーサポートやトラブルシューティングも運用保守の一環です。
導入することで業務改善が見込めるシステム
導入のフローがわかったところで、次に業務改善が見込めるシステムにはどのようなものがあるのかをみていきましょう。
顧客管理システム
「顧客管理システム」では、顧客情報の一元管理や営業活動の効率化が可能です。
顧客の購買履歴やコンタクト情報を管理することで、顧客との関係構築や売上拡大に貢献します。営業チームは、顧客への適切なフォローアップができるでしょう。
また、顧客の購買傾向やニーズを分析できるため、的確なマーケティング戦略の策定が行えます。
営業管理システム
「営業管理システム」を導入すれば、営業プロセスの効率化や売上予測の改善が期待できるでしょう。営業活動の進捗管理や見込み顧客の管理、レポート作成などを支援し、営業成果の向上を図ります。
営業担当者はタスクやスケジュールを追跡し、商談の進捗状況や見込み顧客の評価をリアルタイムに把握。また、データ分析により営業戦略の改善やリードの優先度設定ができます。
生産管理システム
「生産管理システム」では、生産計画や在庫管理、生産工程の最適化が可能です。受注管理から製造・出荷までのプロセスを一元管理し、生産能力や品質管理の向上、納期遵守に寄与します。
生産に関するデータを見える化することで、需要予測や在庫最適化が可能です。また、リアルタイムな生産状況の可視化により、スケジュール調整や問題の早期発見・対応ができるでしょう。
ERPシステム
「ERPシステム」は、企業全体の業務プロセスを統合的に管理するシステムです。
「財務と会計」「人事と給与」「調達と在庫管理」などの業務領域を統合し、情報の一元化や効率化を実現します。統合されたデータベースにより、各部門間の情報共有やプロセスの自動化が可能です。
また、経営者はリアルタイムなデータ分析に基づいた意思決定ができ、業績の改善やリスク管理に役立ちます。
倉庫管理システム
「倉庫管理システム」では、受注処理や配送管理などを自動化し、物流を迅速化することが可能です。
また、バーコードやRFIDなどの技術を活用し、在庫管理の正確性と効率性を向上させます。
倉庫内の在庫管理や出荷業務をシステム化することで、ヒューマンエラーも防止できるでしょう。
CTIシステム
「CTIシステム」とは、コンピュータと電話システムを統合するシステムです。通話履歴の記録や自動応答、呼転送などの機能があるので、顧客対応の効率化やコールセンターの業務改善に役立ちます。
通話情報と顧客データを連携し、来電時に顧客情報を自動的に表示することで、個別化された対応が可能です。
システム導入についてよくある課題
ここでは、システム導入の際に起こり得る課題点についてお伝えします。
どのようなポイントでつまずくことがあるのか事前に把握して、システム導入を有益なものにしてください。
正しいプロセスを理解していない
システム導入において、正しいプロセスの理解が欠如していることはよくある課題です。
プロジェクトメンバーや関係者がシステム導入の手順やステップを正確に理解していない場合、計画の遅延や品質の低下などの問題が発生する可能性があります。
社員や関係者へのトレーニングや教育を行い、プロジェクトの進行と目標達成に必要な知識とスキルを高めることが重要です。
コストと効果が見合っていない
予算を超える費用がかかったにも関わらず、予想された効果が得られないという課題が生じることがあります。
この課題を解決するためには、事前に詳細な予算計画を行い、リスク要素を考慮しなければなりません。
システム導入にはコストと効果のバランスが求められるため、適切な予算管理と効果の見込みに基づいた意思決定が必要です。
利用者からの理解が得られない
システム導入の成功には、利用者からの理解と協力が必要不可欠。しかし、利用者がシステムの必要性やメリットを理解せず、導入に反対の姿勢を示す場合があります。
透明性の高いコミュニケーション・情報共有を重視し、利用者の関与とフィードバックを促すことが必要です。利用者の意見や要望を収集し、導入前のトレーニングなどを通じてシステムの価値を伝えるようにしましょう。
マニュアル作成が進まない
システム導入ではマニュアルやドキュメントの作成が重要ですが、これが進まないという課題もあります。
マニュアルの作成には時間と労力がかかり、プロジェクトが進行するなかで、優先度が低下することが理由です。
マニュアル作成のタスクを適切に計画し、担当者を明確に指名しましょう。さらに、テンプレートやガイドラインの活用、作業の分担や共同作業の促進などを行い、スピーディーにマニュアル作成を実現させてください。
システム導入成功のためのポイント
システム導入の成功には、いくつかの重要なポイントがあります。
ここでは、システム導入成功のためのポイントをお伝えするので、それらの要素を考慮しながら、システム導入のプロジェクトを進めてください。
目的を明確にする
システム導入成功のためには、明確な目的を設定することが重要です。
具体的な目的設定によって、要件定義やシステム選定、導入後の評価などのステップを進める際に、方向性や判断基準が整理できます。
目的を明確化することで、システム導入のゴールや期待される効果を実現させることができるでしょう。
業務棚卸表を作成する
システム導入においては、業務プロセスやデータの詳細な把握が重要です。業務棚卸表を作成することにより、業務の全体像や関連するデータの構造を可視化できます。
現行の業務プロセスやデータフロー、関連部門や役割などを整理することは、システム導入における要件定義や設計の基盤となるため、漏れのないよう業務棚卸表を作成しましょう。
業務フローを改善する
業務フローの改善は、システム導入の重要な要素です。現行の業務フローを詳細に分析し、効率化や品質向上のための改善点を特定しましょう。
システム導入を機に、業務プロセスの再設計や業務の自動化を検討することで、生産性の向上やヒューマンエラーを減らすなどの効果が期待できます。
業務に適したシステムを選定する
システム導入を成功させるためには、業務に最適なシステムを選定しなければなりません。業務要件やニーズに合致し、柔軟性や拡張性を備えたシステムを選びましょう。
ベンダーとの相互コミュニケーションやデモ、プロトタイプの評価などを通じて、システムの適合性を判断することが大事です。
社内の理解を得る
システム導入には、社内の理解や協力が不可欠です。関係者や利用者に対して、システム導入の意義やメリットを明確に伝え、理解を得ましょう。
コミュニケーションや情報共有のプロセスを通じて、関係者の要望や懸念点を収集し、導入プロジェクトの成功に向けたサポートを行う必要があります。
スケジュールの管理を徹底する
発注はしたものの、システムの導入がいつになるか把握できていないということがあってはなりません。プロジェクトの目標やタスクを明確にし、リソースの割り当てや進捗管理を行いましょう。
また、リスク管理や問題解決のための適切なコミュニケーションや調整も必要です。スケジュールの徹底的な管理により、導入プロセスの円滑な進行と期日厳守が実現できるでしょう。
適切にクラウド化を検討する
システム導入において、クラウド化は重要な選択肢のひとつです。クラウドベースのシステムは、セキュリティの向上、コスト削減などのメリットを持っています。
しかし、セキュリティやプライバシー、サービス提供者の信頼性などについて注意が必要です。適切なクラウド戦略を策定し、導入を検討してみてください。
システム導入に関する注意点
システム導入をスムーズに行うためには、システム導入に関する注意点を知っておくと良いでしょう。
ここでは、システム導入に関する注意点を紹介するので、事前に確認してみてください。
業務棚卸の不足に気を付ける
「業務棚卸」は、システム導入の前提となる重要な活動です。不十分な業務棚卸は、現行の業務プロセスや課題を正確に把握できず、システムの要件定義や設計に誤りが生じる恐れがあります。
解決策としては、業務担当者とのコミュニケーションを密に行い、業務フローと課題を詳細に洗い出しましょう。業務棚卸の結果をもとに正確な要件定義を行い、システムの設計に反映させることが大切です。
発注を管理する人材を重視する
システム導入を検討する際には、発注を管理する人材を重視しましょう。
経験と専門知識を持った人材を選定し、適切な権限と責任を与えることでシステム導入がスムーズに行えます。
また、定期的な報告やコミュニケーションを通じて進捗状況を把握し、問題や課題に迅速に対応することが重要です。
システム導入は正しい手順で行うことが肝要
システム導入は正しい手順で行うことが肝要であり、計画段階での要件の明確化や関係者の積極的な参画、適切なツールの選定など、入念な準備が求められます。
また、トレーニングやサポートの提供、段階的な導入を通じて従業員の理解と協力を得ることも欠かせません。
導入して終わりではなく、評価と改善の循環を継続的に行い、システムの効果や課題を把握し続けることも重要です。
綿密な計画と実行、柔軟性と適応力を持つことが、システム導入の成功につながります。
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